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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)8102号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 原告伊村の傷害と損害

(一) 傷害

<証拠>によれば、原告伊村は前記受傷のため、事故当日(昭和四五年一月一〇日)から同年三月二五日まで磯野外科病院に入院し、その後昭和四六年一〇月頃までの間一四〇回以上同病院に通院したほか、その間東京労災病院(八回)、大橋歯科医院にも通院していること、後遺障害としては、額面に数条の顕著な線状瘢痕(長さ約一三センチメートル自賠法施行令別表第七級一二号該当)が存し、犬歯等三本が歯牙脱臼等のため抜去を余儀なくされた(同第一四級二号該当)ほか、頭痛、頭重、第一〇胸椎部、右股関節(運動時)等の疼痛、指のしびれ等の症状(同第一二級一二号)がなお持続していることが認められる。

(二) 収入

<証拠>によれば、原告伊村は、事故当時三五才の韓国人で、約一〇年前から韓国民謡歌手として器楽(長鼓)にも秀で、在日韓国芸能協会に所属し同国系のキャバレー等において専属芸人兼ホステスをしてきたものであることが認められる。

その事故前の収入額については、必ずしも明らかでないが、<証拠>によれば、原告伊村は昭和四二年一一月以降、クラブ故郷、クラブソウル、バー南国に順次雇われていたものであるが、毎月二三〜二六日程度出勤し、四〇〇〇円〜四五〇〇円の日給、相当額のチップ分配金の支給を受けるほか、婚儀、祝宴等に呼ばれて相当額の報酬を受けることもあり、その中から職業上必要な衣服、化粧品、交通等の費用を弁じていたこと、同原告は、昭和四三年以降、伊東亀太郎からアパート(肩書住所)を借受け、室代(共益費とも)月額四万二〇〇〇円を支払い、幼少の二子を擁し、自己の収入で生計を維持してきていることが認められる。(<証拠>によれば、原告伊村は、事故発生後、昭和四四年の総所得額が二一六万円であるとして申告納税をしていることが認められるが、原告伊村の供述により認めるそれ以前同原告が納税をしていない事実に徴し、右申告額を真実に合致したものとみることができない。)以上の事実から推測して、原告伊村は、事故前月額平均一〇万円の所得があつたものとみるのが相当である。

(三) 損害

<前略>

3 休業及び労働能力低下による逸失利益

三六六万九一〇四円

<証拠>によれば、原告伊村のような芸能人の仕事はさほど身体に負担のかかるものでなく、現に五〇才に達しても出演しているものがあることが認められ、このことから、原告伊村が本件事故にあわなければ、事故後すくなくとも一〇年間は前記のように就労して収入を得ることができたものとみるのが相当である。ところで、<証拠>によれば、原告伊村は、事故後、昭和四六年四月に数日間前記キャバレーに出演してみたが、疼痛その他身体上これに堪えられずにその後は出演を断念し、それ以降、同原告の顔面の傷痕の故もあつて出演を求めるものもないこと、また昭和四六年四月頃から紙箱作り、ししゆう、ヤクルト販売等の内職(パートタイム)をはじめ、最近では月五万円程度の収入を得る場合もあることが認められる。

(一)に述べた事実及び右認定の事実によれば、原告伊村は本件事故による受傷の結果、事故後約一年間はその労働能力(所得月額一〇万円)のすべてを、その後九年間は通じてみれば、労働能力の約三割を失つたものとみるのが相当である。右逸失利益を本判決言渡まではホフマン複式月別係数を用いて単利でその後の期間についてはライプニツツ複式月別係数を用いて複利で年五分の中間利息を控除して事故時の現価を算出すれば、右記金額となる。 (高山晨)

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